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2019.10.07
近年,太陽光エネルギーの有効活用が求められる中で,太陽光発電や光触媒による水素生成などが実用化され,普及が進められています。しかし,現在用いられている酸化チタンを使用する光触媒は紫外線にしか応答しないことから,東京工業大学の研究グループではこれまで,遷移金属を全く含まない有機材料で,可視光に応答する光触媒を開発してきました。
本研究では,本学で開発された逆型有機薄膜太陽電池(※4)のアノード電極を物理的に剥離させ,この表面にフタロシアニンを蒸着させることで,通常は酸化反応の起こりにくい負の電位で酸化反応を起こし,大きな酸化力を持つ光触媒を得ることに成功しました。
今回開発された独創的な新手法は,可視光照射で高効率に光酸化反応を起こすことを可能にするものであり,従来にない用途を持つ新しい光触媒の設計につながると期待されます。
本研究成果は,2019年10月1日(英国時間)に英国王立化学会速報誌『Chemical Communications』のオンライン版に掲載されました。


【用語解説】
※1 有機薄膜太陽電池(OPV)
現在用いられているシリコンではなく,プラスチックなどの有機材料で太陽電池を作る試みは,ノーベル賞受賞者の白川英樹博士による導電性高分子の発明直後から始まった。今世紀になって,新材料の開発やナノ構造の精密な制御により,著しく効率が上昇することが明らかになり,「軽くて曲げられる太陽電池を塗布プロセスで」製造する研究が社会実装レベルで進められている。
※2 アノード電極
酸化反応が行われる電極。
※3 フタロシアニン
新幹線の青色に用いられている有機色素である。紫外線や放射線にも抜群の耐候性を示すことから,航空機表面の塗装にも使われて効果をあげている。フタロシアニンの多くがp型半導体となる。
※4 逆型有機薄膜太陽電池
OPV研究では,効率を重視した構造の最適化が行われてきたが,近年は長時間の安定性が重視されている。OPVでも正極と負極があるが,金沢大学の髙橋教授や故桑原准教授らは,この積層順番を従来開発のOPVと入れ替えた逆型有機薄膜太陽電池では安定性が極めて向上し,生産を大気下で行えるとともに,長時間使用時の安定性が高いことを世界に先駆けて明らかにした。
関連Webサイト
・金沢大学トップページ > 研究トピック
・Chemical Communications
・金沢大学 新学術創成研究機構 未来社会創造研究コア再生可能エネルギーユニット