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研究実績・成果

プレスリリース 太るとなぜ血糖値が高くなるのか? 肝臓の糖取り込み機能をコントロールする分子を世界で初めて特定!

 金沢大学 新学術創成研究機構 革新的統合バイオ研究コア 栄養・代謝研究ユニットの 井上 啓 教授,渡邉 一史 研究員(日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは,肝臓のブドウ糖を取り込む機能(糖取り込み)をコントロールする分子「Sirt2(※1)」を世界で初めて特定しました。
 肝臓は,食事により血液中に流入するブドウ糖の3分の1を取り込むことによって,食後に急激に血糖値が上昇するのを防ぎ,血糖値を正常に保つために重要な役割を担っています。肥満や2型糖尿病では,肝臓のブドウ糖を取り込む機能(糖取り込み)が低下しており,このことが食後に血糖値が上昇する原因となっています。しかし,肥満や2型糖尿病での肝臓の糖取り込み障害がどのように発症するのかは明らかにされていませんでした。
 今回,井上教授らは,Sirt2が肝臓での糖取り込みに関与することを見いだし,Sirt2の作用メカニズムについて分子レベルで詳細に解明(図参照)。さらに,Sirt2が働かない状況下でもアセチル化修飾(※2)されないグルコキナーゼ調節タンパク質(GKRP)を作製し,肥満マウスモデルの肝臓に導入したところ,糖取り込みが増加し,血糖値の上昇が抑制されることを明らかにしました。今後,肥満や糖尿病の病態の解明だけでなく,肝臓のSirt2を標的とした新しい糖尿病治療薬の開発につながることが期待されます。
 本研究成果は,2018年1月2日に英国科学雑誌「Nature Communications (impact factor: 12.124)」に掲載されました。


【用語解説】
※1 Sirt2:サーチュインと呼ばれるタンパク質の1種。アセチル化修飾されているタンパク質からアセチル修飾を外す(脱アセチル化)作用を持つ。
※2 アセチル化修飾:タンパク質の翻訳後修飾の1つ。タンパク質の生合成の過程でタンパク質にアセチル基が付加されること。アセチル化修飾を受けたタンパク質はその作用が変化する場合がある。



図 Sirt2による糖取り込み制御メカニズム

 糖取り込み酵素であるグルコキナーゼが働くためにはGKRPから解離する必要があります。グルコキナーゼはGKRPがアセチル化修飾されている状態ではGKRPから解離することができません。Sirt2はGKRPのアセチル化修飾を外すことによってグルコキナーゼがGKRPから解離できるようにします。しかし,肥満マウスではSirt2の作用が抑制されているため,グルコキナーゼとGKRPが解離できずに肝臓の糖取り込み障害が起こります。


 本研究は,日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業,科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST),アステラス病態代謝研究会,上原記念生命科学財団,武田科学振興財団,ノバルティス研究助成,日本イーライリリー研究助成の支援を受けて実施されました。


関連Webサイト

・金沢大学トップページ > 研究トピック
・ジャーナル掲載Webサイト 「Nature Communications
 Title: Sirt2 facilitates hepatic glucose uptake by deacetylating glucokinase regulatory protein
    (Sirt2はグルコキナーゼ調節タンパク質を脱アセチル化することによって肝臓糖取り込みを促進する)
 Authors:Hitoshi Watanabe, Yuka Inaba, Kumi Kimura, Michihiro Matsumoto, Shuichi Kaneko, Masato Kasuga, Hiroshi Inoue
    (渡邉一史,稲葉有香,木村久美,松本道宏,金子周一,春日雅人,井上啓)
 DOI: 10.1038/s41467-017-02537-6
金沢大学 新学術創成研究機構 革新的統合バイオ研究コア 栄養・代謝研究ユニット